ITエンジニアの転職にフォーカスした本が発売されたので読んでみた。結論としては、体系だってまとめられており、転職に一歩踏み出すエンジニアに向けては参考になる部分が多い本だと言える。
ITエンジニアには同一企業で昇給を目指すよりも、転職した方が収入が上昇しやすいという特性があり、転職が一般的である。しかしながら、その転職についてはノウハウがあるが、ノウハウを理解している人は乏しいのが実情である。
IT業界に長く身を置いていると、なんとなく感じていた評価の傾向などが、見事に言語化されており膝を打つ箇所が多い。例えば、転職市場では長所が評価されやすく、社内評価では欠点が指摘されやすい、といったところなど多くの共感が得られるのではなかろうか。
キャリア形成についても、複数のパスが具体例とともに挙げられており、自分が将来どのようなパスを歩んだら良いのかと迷う際には参考になる。日本企業ではあまりみられない、エンジニア/マネージャーの振り子、と呼ばれるキャリアパスも紹介されており、日本企業の人材育成の観点でも役立つだろう。
特に日本人の特性だと思うが年収交渉が苦手な傾向がある。この本では「交渉する」という章を設けて具体的に、どのように交渉していくべきかが述べられている。ここに書かれている文言をそのまま使うだけでも、今より確実に交渉がうまくいくエンジニアは多いだろう。
本書は転職の各フェーズにおいての注意点や考え方などを、転職支援を生業としている筆者がデータを元に示していく。漠然と転職について考えているITエンジニアはぜひ一度読んでみると良いだろう。
以下、読書メモ。書籍から引用。
P19 (言語と収入の関係性について)「特定の言語が高収入をもたらす」のではなく、「高い収入を得られるような資質を持つITエンジニアが、結果としてまだ利用者の少ない新しい言語や特定の専門分野で使われる言語を選択・習得している」と考えています。
P34 (キャリアパス間の移行について)大きく離れたパスへの移行は、より大きな挑戦となります。(中略)こうしたジャンプを実現したいときは社内異動がお勧めです。
P35 筆者の経験上、転職市場では「突出した部分(上限値)」が高く評価されやすく、社内評価では「弱い部分(下限値)」が細かく指摘されやすい印象があります。
P39 (スペシャリストについて) 私の持論を超えて、「開発力だけで突き抜ける」生き方をしている方ともお会いしてきました。そうした方々は、自分の強みが発揮できる環境を自ら動いて見つけています。開発力一本でのキャリアを目指すなら、自己研鑽とポジションどりを意識したキャリア戦略をとりましょう。
P45 (年収1000万超え) 複数スキルの掛け算で希少性を高めた結果、いくつもの企業から声が掛かるキャリアになったそうです。
P47 (マネージャーを消去法で選ばない) マネージャーは会社の経営資源や、何より人の人生を預かる、重い責任を伴う立場です。組織全体の視点が求められるうえ、常に高いプレッシャーやストレスにさらされます。マネジメントがうまくいかず、去っていったメンバーがいたとしても、その詳細はその方の名誉のためにも墓まで持っていくしかありません。こうした苦い経験を胸のうちに仕舞い込む仕事を、消去法で引き受けて本当に大丈夫でしょうか。
P48 結論として、マネージャーは「給料がいいから」や「技術が苦手だから」という消去法だけで選ぶには責任が大きすぎるポジションです。自分の適性や覚悟を見極め、選択していただきたいと思います。
P50 海外のITエンジニアコミュニティでは、「エンジニア/マネージャーの振り子」というキャリアモデルが紹介されています。
P55 純粋な技術スペシャリストとして残れるのは、ごく一部である。
P70 (フリーランス)正社員の年収の1.5〜2倍前後で同水準と考える人が多いようです。
P91 (人間関係の悩み)もし問題の原因の一端が、ご自身のコミュケーションのクセや物事の捉え方にある場合、転職先でも似たような壁に突き当たる可能性があります。
P95 (転職したい気持ちの言語化) タスクに忙殺されて、自己研鑽に充てる時間や体力が十分に確保できない環境も危険信号です。
P101 常日頃からキャリアのことを考え悩む必要はなく、普段は機械に身を任せればよいが、節目と感じる時くらいは真剣に考えてデザインしよう
P140 顧客の利用状況や要望などの一次情報に直接触れ、そこから機能改善や新サービスの企画に繋げたエピソードを書くと、プロダクトに真剣に向き合った実績がアピールできます。
P146 (働き方に関する希望の書き方)書面での記述は必要最小限(例:「可能であればフルリモートを希望します」程度)に留め、詳細は面談や面接の場で直接話し合うことをお勧めします。
P149 (カジュアル面談に臨む姿勢)その会社が、なぜ採用をしているのか?どんな組織で、どんな課題があるのか?採用した人になにを期待しているのか?どんなレベルの人を採用したいのか?どのくらいのペースでITエンジニアが入社しているか?などを面談で聞いておきましょう。
P180 (リファレンスチェックについて)早い段階で「上司に連絡が必要かどうか」「何名を紹介すればよいのか」を確認できれば、リファレンス先との調整を早めに始められます。あるいは、その企業の選考を前もって避けられます。
P187 (希望年収)自分から希望年収(下限)を現年収と同金額で伝える方もいますが、現職をやめなくても良い状況でリスクを取って転職するのであれば、希望年収(下限)は現在よりも高めに設定する方が得策です。その方が後から自分でも納得しやすく、また家族などの理解も得られやすくくなります。
P190 (年収交渉)リスクを取って現職を離れる以上、ある程度上乗せがないと踏み切れない。
P193 (年収提示サービスについて)この提示金額を交渉に使うのも危険です。(その年収には雇用の責任が伴わないため)
P193 強く交渉することが必ずしも良いとは限りません。実力以上の職位で入社してしまったために、期待値通りのパフォーマンスが発揮できず、早期退職に繋がってしまった話も聞きます。
P202 (オファー面談で色々と聞くために)「今日の面談では、御社に覚悟を持って入社するために、あえて踏み込んだ質問もさせていただきたいと思います。お答えできる範囲でかまいませんので、ぜひ色々教えてください」
P205 (組織のカルチャーを理解するために)「特に活躍されている方々に共通する特徴はありますか?」「逆に、チームに馴染めなかった方の特徴はありますか?」「これまでチームを離れた方の理由として、どのような傾向がありましたか?」
P206 (退職意思の伝え方)会社名は伝えず、業態や提示された条件、期待されている役割など、転職を決意した理由に関わる情報に留めることを勧めます。